地域再生というと都市部から配布される税金を「使う」ことばかりが目立ちます。しかしながら、実際はお金をもらって使うことでは再生なんてなくて、地域自らが「稼ぐ」ビジネスを創りださなくてはならないわけです。
区画整理
どんだけの予算も一度使えば終わりのようなイベントばかりすればそれで終わり、ましては開発などを伴って維持費などがかかる施設を作ってしまえば、それは毎年地域が抱える負債になるわけです。しかし、地域が再生するためには、お金を投入して、毎年地域に経済を生み出し、雇用を生み出し、税収をもたらす資産となる「稼ぐエンジン」を作るビジネスをしなくてはなりません。

地域再生事業を単に再分配だと考え、予算をもらって単に使うだけでは、予算への依存性を高めるだけで、地方の自立なんて未来永劫こないばかりか、支援を受け続ける限り、支援側の制度に則るしかなく、多様な地方のあり方など担保されません。もちろん、そのような道も一つの選択ですが、地域再生し、地元の歴史文化に即した多様性を発展させていき、成熟した地域を目指す上では、経済的な自立性は極めて大切です。

金持ち父さん貧乏父さん
ロバート キヨサキ
筑摩書房
2000-11-09

もう15年も前の本ですが、当時流行った金持ち父さん貧乏父さんという本があります。まぁなんとなく胡散臭い金儲け本のように見えますが、まぁ一般的に学ぶことがない、会計・金融の基礎知識である「フィナンシャルリテラシー」をわかりやすく解説しているものです。

さて、ここの有名な一節に、「金持ちは資産を手に入れる。中流以下の人たちは負債を手に入れ、資産だと思い込む。」というのがあります。これは個人だけでなく、自治体にもあてはまる話です。

資産とは何かといえば、毎年黙っててもお金を産んでくれるものです。
負債とは何かといえば、それは毎年黙っててもお金を食っていくものです。

実は、地方再生事業の多くは、都市部から地方に、国を介して分配される予算を使い、自治体は「負債」を手に入れているのに、「資産」だと思い込んでいることが多くあります。

自動車も運送会社が購入するのは資産となり、売上を作り出すことに寄与して利益まで生みますが、単に自家用車として購入すれば、それは毎年の経費がかかり、損失を生み出します。

自治体の場合、例えば、巨大な施設開発をして、「資産」だと思い込みますが、実態はその施設経営を支援するために多額の予算をさらに捻出しなくてはならなくなったり、公共施設を中にいれて維持費をかけることになったり、と建ててからも多額の予算が必要になる「負債」だったりします。

最近では、社会"資本"整備も、名ばかりで、実際には住む人もいないようなところを開発して終わりになってしまったら、道路整備、上下水道整備、周辺整地にかかった投資は全く回収できず、さらには地価まで下落傾向になっていき、それらは結局は地域の「負債」になります。開発してできたものが全て「資産」になるのではないのです。お金をかければかけるほど、毎年の維持費という重圧を生み、大きな負債を作っていくことになったりします。

負債を資産だと思い込んでやっていたりするわけです。地方が再生するどころか、ますます経済が落ち込むばかりか、税収さえ食い散らかされて、医療教育福祉などの公共サービスに充てられるはずの予算さえなくなっていくという最悪の事態になります。 

逆に本当に活性化している自治体といえるのは、実施した活性化事業を通じ、しっかり毎年、地元にお金の流れを生み出し、市場を通じて雇用も生み出し、税収まで増やすことに繋がっているものです。

しかしながら、全国総貧乏自治体といってもいいほどの状況でもあります。
財政が比較的いいな、と思ってみれば、大企業拠点があったりと自治体が賢いのではなく、たまたまそこの立地にいる企業が頑張って納税しているだけだったりします。それで意味不明な巨額のインフラ投資などを国からの予算を引っ張ってやってしまったりしていて、せっかくある税収をドブに捨てるようなことしていたりしますからね・・・。だから、単に決算とか見るだけでも分からず、個別事業をみていく必要があります。

活性化事業や都市開発など稼ぐべき事業で稼がず、重要インフラの置換えや再分配や公共サービスとしてきっちりやるべきところを変な三流経営意識でコスト削減削減だけ進めていっていたりする状況が進展しないようにする上で、金融に関する基礎知識は極めて地域活性化全般に求められています。

やった事業で作られたものが「資産」なのか「負債」なのか、自分も事業をやっている地域を見回してみると、そこの自治体が金持ち自治体か、貧乏自治体か、その経営力が分かるところです。 

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