少し刺激的な記事がありましたので、取り上げます。というのも、以前別の行政関連の専門家の方からも同様のお話を聞いたことがありましたので。

ここ数年「交付金」というものが増加しています。まちづくりなどで有名かつこの交付金化の走りともなったのが、国土交通省のまちづくり交付金なではないでしょうか。(但し、これは今回の批判されている交付金項目ではないようです。)その後様々な省庁でそれまでの入り組んだ補助金を整理して、交付金化する動きが活発に進められてきました。
それまでの使いにくいひも付き補助金を、各自治体が自分たちの裁量の中で自由に使える交付金に変えよう、という流れです。理念的には特段おかしくないと考えられる内容なのですが、実際に創設される前後でまずひとつ議論がありました。

①もし、各自治体が自分たちの裁量で利用できることが目的であるならば、財源委譲をしてしまえばいいではないか、国の干渉はいらない。
②財源委譲と同じ効果が得られるのであれば、わざわざ転換するコストをかけてまで国から地方に委譲せずに実施しても同じではないか

ということです。地方分権化、三位一体の改革などの流れで急速に財源と権限が地方に委譲される中で、交付金化という手段はその中庸をいく方法だと言われてきました。交付金化すれば、とりあえず地方への財源委譲のプライオリティーが下がる、という背景は確実にあったと思われます。

その交付金が実際の運用が始まり、一巡した中で今度は運用面で以前の補助金制度とほとんど変わらない、という意見が出てきたのが今回の下記の記事です。声を上げたのは鳥取県ですね。ごまかし、というのはまた過激な意見ではありますが、なかなか使いにくい、当初のような弾力性も得られない、早急に財源委譲に切り替えるように求めているようです。
交付金化の当初の議論における対立が、国と地方との間で再度新たに運用実態から生まれることとなったようです。

ひとつ中心市街地活性化などにおいては、以前から行政が中心市街地開発なのか、それとも郊外積極開発なのか、という戦略的意思決定を行う必要があると思っています。これは財源委譲によって各自治体が自由に決めて行うほうがよいのか、国として交付金や補助金を中心市街地活性化に積極的な自治体に資金供給をしたほうがよいかの、そのアプローチにおいても議論が分かれるでしょう。
これらは各自治体規模での部分最適を各自治体間の競争などで生み出すことだけでよいのか、広域や超広域における全体最適化を国などが手を入れて実現できるものなのか、悩まされるところです。

さらに今後地方分権が進む中で、単に責任や義務のなすりつけあいを行政間で行うのではなく、各主体の実務的な執行能力を含めて財源と権限の委譲は、行政間での建設的な分業によって行われて行く必要があると考えます。


≪参考WEB≫
□交付金化はごまかし 県が問題点をリストに・日本海新聞
□地域再生基盤強化交付金
□まちづくり交付金