ここ最近、毎日の研修材料で全国の中心市街地活性化基本計画のレビューを久々に行なっています。私なりにも過去に訪れた街が多いため、それらについての状況認識と基本計画について見ています。

ただ恐ろしい程にこれらには共通点が見られることが多く、個別事業もメニュー化されていることもありますが、それよりも根源的な現状分析と処方箋の基本的なスタンスに共通項が多くあります。ただ「現象」を説明はしているものの、その原因は各都市によって違うと思うのですが、多く都市では「現象」を述べるにとどまり、その原因にまでは言及していないものが多いです。恐らくは原因まで指摘すると、その原因を生んでいる主体者批判になるからだと思いますが、実はそこが大切だと思うのです。

なぜかというと、中心市街地活性化というのは、拡大人口、拡大経済ではない現状では、既存のパイを皆で食い合うことで中心部が勝ち組になるために何ができるか、ということだと思います。消費者も選択肢として中心部以外がありますし、民間企業も投資効果が高いほうを選択する時代にいかにして呼び込めるような環境を中心部が作れるか、ということだと思っています。つまりは、自分がどうするか、を考える上で、相手に対して相対的優位をいかに作るか、という支店です。これがなかなか見られません。

例えば、現状分析としては、

モータリゼーション : 自動車社会が到来して郊外に人口がシフトしたから中心部が相対的に地位を低下した。->過去に郊外に都市開発を進めてしまった。公共施設を分散移転されてしまった。土地の造成をして住宅販売を促進。以下の大型店出店についても認めてきた。[これらが悪では全くなく、これらによって生活環境が著しくよくなった背景がある。投資効果も高く民間資金も含めて郊外に集中した。]
大型店の出店 : 物流の高度化、モータリゼーションによって開発用地が拡大したことなどによって大型店が展開した。
人口減少 : 少子高齢化、人口流出について対策を講じれなかった。
産業空洞化 : 支店経済の空洞化(統廃合)、工場の海外移転などによって空洞化が進んだ反面、その代替産業の開発、及び雇用シフトができなかった。
空き店舗増加 : 中心部の商業物件に空きが目立つようになった。

などが指摘されています。

これらはまさに、状況としてもどこにでもあることですし、嘘ではないでしょう。各項目における原因に対してはあまり深掘りされていないことが多いです。何人が統計上減少した、何事業所が減少したといいつつも、その原因についてはあまり検討されていないことが多いです。勿論原因というのは単一要因ではなく、複合ですし、もしかすると仮説が間違っていることもあるかもしれません。しかし、これだけで対応策を講じるのは危険です。お医者さんが「お腹がいたい」ということだけで、「痛い要因」を考えずに薬を処方することはないのと一緒で、その原因が食中毒なのか、臓器系疾患なのか、精神的なものなのか、とか原因によって対応策が変わるわけです。まちの活性化事業も現状に対して、それが「なぜ起きたのか」というあたりを考えていくと、前述のとおり相対的な問題が多いので自分たちだけが頑張ってこれやります! というだけでは、うまくいかないのが分かるはずですが、基本計画の多くは、これら現状をもとに「空き店舗が増加しているので空き店舗補助やります」といった類のものが多くあります。

昨年度、熊本市と熊本城東マネジメントでの事業で、熊本市中心部物件の全件調査を行いましたが、空き店舗の発生要因は様々です。例えば、「市場として出店としても儲かる条件か否かによって分かれるため、坪単価引き下げはしているが、床面積は大きい区割りのまま」「1Fで高い家賃がとれているため、その他のフロアについては開いていても喫緊での入居を望むような状況にない」など、空いている要因は複合的です。さらに、これらの自分たちの理由だけではなく、より出店して稼げる可能性のある周辺大型店のテナント用スペースとのリーシング競争もあります。これらの環境に対抗するのには、単に家賃補助を期間限定やります、というのはほとんど意味がなかったりします。例えば、周辺大型店のテナント用スペースも厳しい現状があればフリーレントを必ずつけてくれます。さらに、床割についても過去の大きいままだったりすると、坪単価が安くても家賃自体は高くなるし、内装工事投資も大きくなるので、参入障壁は高いままだったりします。また、設備自体も古いと同様です。さらに、大型店だけでなく、同一地域内でも物件同士は市場内では競合関係にありますので、それぞれでの条件競争があります。さらに、一部に家賃補助あげるだけでは、これらの解決策に繋がりません。

例えば、他の競合を考えると、償却済み物件で、スペースの小規模化による実金額を下げて新たな入居者を集めるようにする、飲食や製造小売など利益率の高い形態に特化する、とか相対的優位性を確立することに繋がるだろう方針を持ち、今後は小規模な店舗、複数人が同一スペース入居するようなシェア型店舗やオフィスなどに変えていくほうが小さな需要を取り込もうと考える。オーナーが入居希望者などを集め、内装工事などを行う場合にリノベーション予算の一部を支援をするなど、どういう方向で不動産マネジメントを変更していくのがいいのか、相対優位に立てるのか、実需がある段階で投資する、という方針とか、努力したオーナーが報われるようにするとかやり方があると思います。オーナーは実際には事業リスクとかを土地保有と事業投資を区分して、土地保有に関する利益については最劣後であるのが自然だと思っています。

つまりは、空き店舗あるから空き店舗補助金、ということではなく、変な家賃補助をやられるほうがより市場環境を歪めてしまったり、全く無意味だったりするので、要注意だと思っています。皆が家賃が高いというか家賃補助出したのに申請が来ない、というのは、家賃補助だけでは相対的優位性が地域内では確立できないという実態を示していると思います。もっと違う観点から見たら、いい条件が地域内の他にあるのだと思います。市場って正直なので。再開発事業も同様ですね。開発しても、相対的優位性をどう確保できるものであるか、という視点が大変重要だったりするわけです。

何より活性化事業内で、効能が矛盾してしまうこともあるわけです。大型店が進出して選択肢が増加したというメリットと、デメリットとしては相対劣位の既存中心部は衰退したわけで、空き店舗をやったりします。しかしまた再開発事業を積極的に展開し、新しい商業床をどんどん増床して競合を増加させるといった具合です。集客とか色々と言いますが、結局はトレードオフなので、どちらをとるのかのがハッキリせずに総花的でみんながよくなるという幻想型計画ですね。実際には再開発施設もダメ、周囲もダメになってしまうこともあります。

現状だけより、もう一段階掘り下げて、その原因構造に目を向けて、どういう処方箋でその原因の一部でも改善するか、というのが大切だなーと感じたゴールデンウィークでした。