昨夕に連続ツイートをさせていただいた内容をご好意でtogetterでまとめて下さいました。この手の話題については、大変興味を持っていただけたみたいで、地域活性化に取り組もうと思われている方が確実に多なっているのに気付かされました。


僕は1998年に早稲田商店会に関わったのをキッカケにして、早稲田での取り組みが全国的に脚光を浴びはじめる時に関われたことで、全国各地の方々と知り合いになることができ、それらの地域にお伺いして、一緒に事業に取り組む機会に恵まれました。また、インターネットがその頃は普及期に入っていたこともあり、ネットを利用してプロジェクトを進めたり、サービス構築していくチャレンジもでき、全国の商店街から資本を集めて会社を作って経営してみる、という恐らく後にも先にもなかなかない経験もさせてもらいました。事業としては初期は本当に失敗続きではありましたが、その後方向性を持つことができ、今の礎となっています。その問題意識から経営学を大学院では専攻し、これも今の強力な武器になっています。そんな話はまた今、今度本にしようと思っていまして、木下が今のような考えに至ったプロセスや頭の中のフレームを今年夏すぎころには共有させていただけると思います。ご興味があれば、ぜひ出たら読んでいただければと思います。

これから地域活性化に取り組みたいと思っている人には、以下の7つの点についてぜひ考えていただければと思います。答えでもなんでもなく、木下が至った現状での考えです。

(1)自分のやりたいことを親しいチームで始めること
やはり自分がやりたいことからはじめるのがベストだと思っています。人から言われたことに取り組むことが苦痛なのは言うまでもないですが、一番陥りがちなのは「分析してこれが有効だ」「こういう人達がいるからサービスをしよう」といった、他人のニーズをマーケティングやヒアリングを通じて把握して、実行しようとするパターンです。
私が初めて関わった早稲田商店会ではやりたいことを提案して実行していました。その後、共同出資会社になった途端に私は、上記のような「言われたサービス」「可能性があると考えるサービス」として地域に提案して行きましたが、全くもってうまくいきませんでした。自分が自分で楽しめる、必要だと思えるサービスであれば、隅々までこだわることも全く苦痛ではないですが、人に向けたものを提供すると「なんてワガママだ」「そこまで言われてまでやりたくない」という気持ちが出てきたり、何よりそんなところですから提供したのに対価を支払ってもらえないということが沢山出てきました。堪え性のない性格というのもあるかもしれませんが、私は自分が本当に必要だと思う、地域での独自財源を作り、それによってまちづくりを推進するという自分がやりたい方法が見つかってからは、ここは解決できつつあります。

あとは、1人だけではじめるよりチームではじめることをおすすめします。最初の頃は事業は心細いものです。結局責任者は孤独ではありますが、チームで取り組むほうがいい。この時にはパートナーのスキルよりも性格を重視したほうが良いです。ただ、これが難しいところで組織や事業成長に伴って変化してくるのです。最初はあくまで仲間というのが大切という意味です。

自分のモチベーションを保ちやすいネタで、保ちやすい環境を作ってやっていくことがプロジェクトの成否にとって、大変大事だと思っているのです。正しいことより、楽しく取り組めることが何より大切だと思います。

(2)資本と経営は一致すること
これは昨日のツイートでも指摘しましたが、初期に資本と経営の分離はしてはいけません。少なくとも資本主義経済において、資本と経営は対等ではなく、あくまで資本を出した側に権利があり、経営側はその資本をもとに事業を回していく実務に取り組むことになります。しかしながら、地域での事業の初期は当初考えていたとおりに進むことはほとんどありません。自分の経験ではゼロです。その場合に、資本を出して頂いた方に「こういう事業で取り組むのでお金出してください」とお願いしてスタートすると、この軌道修正に大変時間と手間がかかります。結果的には、事業を柔軟に変更しながら進めることが困難になり、資本を出して頂いた方にとってもマイナスになったりします。これは自分が共同出資会社をやっていて、初期に計画した事業では全く黒字化を図れず、独自財源事業開発や調査研究を基礎として黒字化を図っても、なかなか株主とのコミュニケーションで方向転換を本格的にできなかった背景があります。

初期の事業は最近のリーンスタートアップ[エリック・リース (著)]であったり、小さなチーム大きな仕事[ジェイソン・フリード (著)]、でも指摘されるように、どんどんサービスを試していった上で、正解が見えたらそれに注力して成長に向かうのが一番だと思っています。

だからこそ柔軟に責任を自らとりながら方向転換を図っていくことができる環境で、自分スタートから関わっている、まち会社については最初から資本と経営は一致するようにしてきました。自分もお金をだせる範囲で出し、共に経営するというパターンで取り組み、これは今のところはうまくいっています。

(3)事業計画の提案よりもまずは始めてみること
よく事業計画を策定してプレゼンしたり、どこかの団体に売り込もうとする人がいます。地域活性化分野においても、地元の既存の商店街や自治体、まち会社などに提案して、これらの団体事業として取り組んでもらおうとすることがあります。これは資本と経営の一致の観点からもあまりうまく行かないわけですが、何より提案をして相手を説得することに力を使うよりも、自分でまず始めてみることをおすすめします。

空き店舗対策の調査をするより、自分で店をだそうと思えば、なぜ店を出す人がそこにこないのか、わかると昨日もツイートしました。こういう実態もやるからこそ得られる情報だったりします。つまり深い情報はやった人しか得られないと思うのです。

地域活性化のアイデアは世の中にあふれています。この分野で何らかの注目を集めている人たちは、アイデアに自ら挑戦した人たちです。自分で自ら取り組み、形にしてみせることが何より大切なのです。論より証拠です。

そして、提案相手がもと答えを持っていないとすれば、誤った方法で事業を推進する人たちだったとしたら、彼らが納得する事業計画になった段階で、その事業は終わっています。そういう時がなんと多いことか。これからの時代に合わせた自分たちの頭で考えたことに自信をもって、まずは始めてみることをおすすめします。

(4)補助金もらわず、自己資金でやること
初期に「手元にお金があまりないので、この30万円を補助金の自己負担分として活用し、2/3の補助金もらって90万円にして事業を始めます」といった話を聞きます。絶対にやめたほうがいいです。

事業に必要なのを「お金」だと思っている人がいますが、綺麗事ではなく、私はお金は勿論資源として大変重要ですが、「時間」と「モチベーション」と「柔軟性」のほうが大切だと思っています。(1)でやりたいことをする、という話をしましたが、補助金をもらうとまずやりたくないことが爆発的に増加します。税金の一部をもらうわけですから当たり前だ、という論調はありますし、そのとおりでしょう。だからこそ、やめたほうがいいのです。申請書、担当者からの指摘に対応した修正、事業に必要な経費の見積書、納品書、請求書、領収書などの整理、事業にかかる報告書、さらにはその事後確認や監査への対応。膨大な手間がかかります。これを好き好んでやる人であればいいですが、私はこれは時間とモチベーションの最大の敵になっていると思います。
さらに、事業変更の柔軟性の喪失も伴います。事業計画通りに進捗することを重要視する補助金事業では、何かを変更するのにも変更申請、その妥当性の立証といったような話が伴いますし、補助金担当者の多くは、その変更を過度に嫌がります。結局は、最初いったとおりに進めることになり、事業に着手して気づいた気づきを全く生かせなくなります。

重要なのは、時間、モチベーション、柔軟性の3点です。私は補助金とトレードオフ関係にあるこれに問題があります。

そして、最後に言えるのは「癖になる」ことです。これもモチベーションに係ることです。
人間のモチベーションは経営組織論でも多く試されていて、例えば「これまで無料でやりがいをもってやっていた作業を、今月は時給1000円出してやってもらう」。そして、翌月に予告なく「また無料でやってくれ」と言われた人は、その生産性を著しく失います。つまり同じ作業にもかかわらず、損したような気持ちになつてしまう、モチベーションというのはそういう相対的なものだったりします。

自己資金でやり慣れている人も、一度補助金をもらうと、もらわない時と比較して「損した」ような気持ちになります。だから次も必ず補助金をもらおうとし、数珠つなぎで常に補助金をもらおうとし続けることになります。これを私は、補助金の麻薬性と読んでいるところです。そういう団体はゴマンとあります。そのうちに補助金のメニューにかなう事業をやるようになる、順序関係が前後してしまうようなところまで至れば、完全なる中毒です。

だから補助金ではなく、自己資金で挑戦するクセをつけることが大切だと思っています。自分たちがやりたいと思うことを自分たちでしっかりとやる癖をつけることが大切です。

(5)店など固定のものありきではなく、仮設変動型からスタートすること
自己資金で、と言われてもお金ないです。という話がありますが、それって例えば昨日のツイートでしていたように、お店開くとかそういう投資が必要なことから始めようとしていないでしょうか。

まず自己資金でスタートするのであれば、その規模に併せて店を出せる金額でなければ、行商型で空いたスペースで仮設で店を出すことも可能でしょう。フリーマーケットやマルシェなどから事業をはじめることもできます。契約関係を整理して、一括発注によってコスト削減し、その一部をまちづくりに利用する我々のモデルのように初期投資がいらないビジネスシステム型の取り組みもあります。

カネがないなら知恵を出せ。早稲田でよく言われたことです。逆にカネがあるから知恵が引っ込むとも言われました。

初期は高い固定コストが書かないものが着手し、収入が増加してきて可能になったら固定投資を伴うところに入るのがベターです。だから初期は例えばあらゆる条件を変動化してもいいと思います。軒先を借りるにあたって、1日1000円を固定で払い、あとは粗利の10%は置いていきます、というような条件設定です。ここは交渉です。人件費も全て貢献度に応じて、チームで最初に決めて、粗利の40%を人件費として、その中から配分を決めてAさん15%、Bさん15%、Cさん10%という形もありでしょう。

初期を仮設変動にしていれば、「あ、これは違った」と思って逆戻りしたり、違うやり方に変更したりどんどんできます。サンクコストが安くすむのです。最初にすごい勝負はってしまうと、これが難しくなります。カフェを出す前に、仮設で週末のイベントの時に同じ場所でコーヒーを入れて飲んでもらう仮設カフェを経営していれば、最初考えていたような深い焙煎よりライトなほうがお客さんが好みかもしれないし、椅子も硬いものよりソファーのほうがいいという話も聞けるかもしれない。むしろ、コーヒーよりも紅茶のほうがいいとかもあるかもしれません。最初にかねかけてカフェを出してしまったら、その分軌道修正にさらに資金も時間もかかることは言うまでもありません。

初期のスタートアップをどうするか?、は試行錯誤のしどころ盛りだくさんです。今進めている遊休不動産を利活用した事業などでも変動化を基礎とした不動産マネジメント事業を進めています。

もともと事業というよりはそうやってアドホックな形からスタートし、規模に応じて固定化を図っていくことが得策です。

(6)黒字であること
そして、わずかでもいいから黒字であることだと思います。
初期から1%でもいいから、決算を黒字にすることが大切です。どんなに偉いことをいっても、黒字になっていない事業は市場で評価されません。何より地域で変化を生み出すような挑戦的事業については、失敗して欲しいと思っている人たちも沢山います。「ほら見たことか。偉そうなこといってて、結局赤字だよ」といわれ、あることないこと含めて風説の流布があります。だからこそ揚げ足取りされないよう、胸を張って黒字を出しましょう。

また何より自分たちの為にも黒字にならない事業は次の一手も見えなくなってしまいます。しっかりと黒字を出せば、財務上の自己資金調達にあたる内部留保が可能であり、翌年度する投資の原資を持つことができます。

とんでもない勝負事業で稼ぐこと優先ではなく、まずはコンパクトにも黒字になる事業を心がけること。大規模な事業においても基礎は一緒だと思います。ここは大規模な事業については結構奥深くて、税制や減価償却とかの観点の知識も必要ですが、それはまた別の機会に。どちらにしても、黒字は大切です。

(7)利益は再投資し続けること
地域活性化で重要なのは、資金を集めて投資して利益を出して、さらに再投資していくサイクルです。今はこの再投資が滞りがちです。地域で稼いだ資金は積極的に地域で再投資していくこと。これが意外と難しいです。稼ぐことで一生懸命になると、今度は何を次の一手としてやると地域にとって効果的で、有効な再投資であるのか。ここもまた知恵のいるところです。

将来に向けた投資は大切です。人々が必要だと、対価を支払ってもらえるサービスを作り、その中から儲けを出し、さらに投資していく、まちの活性に寄与するといえます。

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以上、少し長くなりましたが、昨日のツイートのエッセンスを一部まとめました。もっと話したいことが沢山ありますが、それはまた本などまとめたいと思います。経験だけというより、他の地域や我々の仲間のケースも踏まえ、経営系のフレームなどから合理的だと思うことを述べました。

地域活性化に取り組む人がもっと増えることを期待しつつ、自分も負けないように頑張りたいと思います。