まち会社は、現状で課題のある地域構造を変革するためのベンチャー企業みたいなものです。ベンチャーは文字通り、挑戦してなんぼ。打算的な事業をやっていては、過去の延長線。持続的イノベーションの世界でとどまり、破壊的イノベーションにはなりません。このあたりのイノベーション論については、必読的経営学古典とも言えるクリステンセン著「イノベーションのジレンマ」、最近発売になった「イノベーションのDNA」をお読みください。

 

さて、そんなまち会社が地域における変革のビークルと成り得ているか。これは結構難しい課題です。そもそも「まちづくり」は過去、地元の有力者たちの意思決定により推進されてきました。ま、元老院みたいなもんですな。ただ、そんなんでは過去のレガシーシステムをそのまま引き継いで次の時代に対応させようと苦心して、結局は適応できなくて推進していくということが何度も行われて、今に至ります。つまり、変革をするための組織を、変革してしまってはメリットのない人達に任せているということです。そりゃうまく行くはずはありません。

つまり、まちの再生は、過去のグルーブとの調整では達成されることがありません。過去がうまくいっていたのであれば、そのまま持続的なものでもどうにかなりますが、既に持続的イノベーションを続けてきて限界がきてしまって、全く違う構造に変えていかないと将来のハッピーは獲得できなくなってしまっているわけです。新たな方法によって、既存グループは再編され、残るものもあれば、そのまま全く無くなってしまうこともあるでしょう。ただ結局はそれによって、地域は新たな時代に対応できるようになり、生き残ることができます。これは100年以上続いている家業を見ていても如実にわかりまして、結局は商売替えなどをバシバシやってきたお店が長らく続いていることが多くあります。垂直統合度の高い製造小売型は結構変化に強いです(赤福やカステラなどなど)が、特に商売などの時代によって大きく変わらざるを得ない、バリューチェーンの末端や間に入っているものは変化をどんどんしていきます。ま、分かりやすいところでいえば、百貨店だってもともとは呉服屋が業態変化で対応したものが日本では多いですしね。

ただ、地域内で日々を過ごしているうちにいつのまにか、こういう変化に鈍感になり、いつのまにかミイラ取りがミイラになることもあります。

先日AIAでβローンチした「まち会社診断ツール」は、このような常に地域におけるイノベーションの旗手たる組織であり続けているかという自己点検していくためのツールという狙いと、また中途半端ですが今後充実していくソリューション販売との連携を図るための分析ツール(自分の組織にはどのソリューションが適切なのかということが分かるように)という意味合いがあります。

■AIA・まち会社診断ツールver1.0

一週間で500名の方に試してもらいましたが、残念ながら100ある回答に全て回答していただいた方は13名にとどまています。10%もないわずか3%弱程度。

100も面倒だ、質問が重複している、耳が痛い、こんなんでいいのか、色々とご意見はあろうかと思いますが、100くらいは応えていただきたい。何より適当に作っているように見えて、これは注記しているとおり、企業再生のビジネス書としては有名なV字回復の経営(私が大学院いっていた時の先生の一人でもある、三枝さんが書かれている)など企業再生のフレームを利用しつつ、まち会社独特な内容についても踏み込む質問になっています。

実際このあたりの問題点については、しっかり点検しつつ行かないと、私自身も危なかったりします。常に既存の組織の方と接触したり、接触を求められることが多い仕事柄、そういうのに飲まれないように、常に自己点検し「いやいやいかんいかん、それに流されてはいかん。」とやり続けないといけません。

もしも自分がその片棒を担ぐようなことになったら、その組織や事業は全てやめたほうがいいと思っています。手を引くこと。これは宿命で、一時期の破壊的イノベーションを推進した団体・企業は、次の破壊的イノベーションの波の上では、結局は持続的イノベーションを続けるだけの伏魔殿に成り下がってしまいます。

栄枯盛衰。諸行無常の世界。
自分だけは違うと思わず、客観的に組織状況を見直して次に進むことこそ重要であると思っています。

ということで、100の質問をぜひ点検のために有効にご利用くださいませ。