昨晩はハフィントン・ポスト日本版の地方創生シンポジウムに登壇させて頂きました。

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神山町の大南さんとは研究会や委員会でご一緒することあっても一緒に登壇させていただく事は実は初めてでした。とはいえ、お会いすると色々といつも「あれはどう思う?」とか意見交換させて頂いたりして、楽しい限りです。「時差ボケで木下節が今日は大丈夫?」と会った時に言われた時には、狂犬ブランディングの傷の深さを感じましたw

ちょいと話しを聞きながら感じた内容を以下に整理します。

◯ 神山町・グリーンバレー大南さんの発言から考える。

大南さんと話していてやはり思ったのは、結果は大して重要ではないということ。すぐにサテライト・オフィスとか、必要店舗誘致みたいな結果にばかり皆が注目するが、それはソリューションではなく、プロセスの中で生み出された副産物に近い。

地域での事業は、

  環境条件 × 事業手法 × チーム(人物) = 結果

という変数を理解した時に、同じような中山間地にあったとしても、事業手法を同じくしても、チームによってその結果は変わる。特にIT系を含めて海外や地域外の人を入れていくという取り組みを20年前から続けてきた町民の人たちだからこそ受け入れができて、スタンフォードに留学経験もある大南さんたちだからこそ、の思考のパターンやコンセプトや人脈があっての一つの結果となっている。だから結果から逆算しても、全く意味がない。

環境条件と事業手法は客観的なものですが、チーム自体は際立って主観的なものごとになる。

お金の問題はこの中の環境条件の一つにすぎず、お金がボトルネックになっている取り組みは、そもそもの事業手法とチーム自体に問題があるほうが多い。本当に"いい取り組み"には確実はファイナンスされる。誰も金出さない、誰も寄付しない、誰も投資融資しない取り組み自体は、良くないのだ。それを補助金でギャップを受けたところで、結果は出ないのである。

このあたりについて大南さんは「人の流れをつくる」という表現でお話をしていたが、外国人の農家民泊という取り組みなどはそれらの構成による結果の一つであって、その継続の先に現代のサテライト・オフィスなどもある。

単に光ファイバー引っ張って、サテライト・オフィス補助金出すような愚策は、全く地域での事業の仕掛け方を、さらには取り組み自体の正確な理解をしていない証拠と言えるのではないだろうか。

重要なのは、この神山の20年にわたる「環境条件 × 事業手法 × チーム(人物) 」がどのような構成でどのように取り組まれてきたのかというプロセス自体を学ぶことにある。このあたりをひとっ飛びで結果だけ真似れば、地域活性化するみたいな勘違いをしては、地方創生予算を何百兆円つんでも失敗しか地方に産まないだろう。


◯ アフタヌーンソサエティ・清水さんの話から考える。

さらに清水さんとは当然ながら北九州、紫波町、これらを横断する公民連携事業についていつも一緒させてもらっていますが、今回は改めてそれらの事業を俯瞰した話をしていました。

いつもの小さい、大きいリノベーションの話からの、「自立」が大切という指摘が中核をなしています。
特に不動産事業、まちを一つの会社として見立てた時に過去の資金調達によって形成された資産部分を活用し、今の時代に合わせて売上を創りだして利益を生み、さらに再投資をする。この再投資サイクルをエリア全体の方向性を決めて小さな範囲で一気にやることで変化を生み出す、まさに北九州小倉での取り組み。嶋田さんたちはじめとして、地元の若手、梯さんをはじめとした地権者、そして北九州市などのチームでの動きの話。清水さんはじめわれわれも共に出来る中で投資をして事業を回していく。結果として、10件以上の物件が再生し、300人以上の雇用が生まれ、通行量は4割upした。正しいやり方をしっかりやれば、正しい結果がついてくる。

さらに紫波町の場合は公共施設整備と組み合わせて、集客のないエリアに商業性を担保させていく方策についての説明。
特に過去の区画整理などの無機質な碁盤の目方式の手法がまちの不動産価値を喪失させるという指摘から、オガールでは効果的なグランドデザインとして、広場を中心に置き、背後に駐車場をしっかりと十分な量を配置しつつ、車から降りたらウォーカブルゾーンで完結できるようにし、各建物は2-3Fの低層におさめて空が広くなるように抜けた環境にしているなどについて解説。このあたりとかは、まちの全体を構成する取り組みをする上で、全体戦略が間違っていると、個別でいくら事業をやっても、上限が伸びないというところ。つまり全体のMAXは初期の全体戦略に依存するというあたりについても解説。

小さなリノベーションも、大きなリノベーションも、すべて逆算というところ。

開発する際にはざっくりとして

投資回収期待期間の家賃合計 ー [開発予算(用地取得費+建設費)+投資回収期待期間の維持管理費合計] = 収支が黒字

となる状況を徹底するためには、家賃金額を先にすべて決定し、その金額に対して確実に黒字がでる規模で、開発予算を算定し、決して補助金に依存しないようにする。特に、開発予算と維持管理費は相互依存関係にあり、もし開発予算に補助金がでたところで、そこが大きくなれば、引きずられて維持管理費も大きくなる。

1坪あたりの開発費の算定は簡単で、投資回収期待期間の家賃合計を建設する建物の坪数で割り算すれば、自動的に出てくる。オガールプラザの民間事業棟は坪40万円くらいの中でしきることが自動的に決まった。その時に、普通の建て方では無理だから、東大農学部の構造体の専門家と建築家が共に新たな構造体を創りだして、地場産財かつ地元工務店で開発してその金額に収まる建物の方法を作った。

つまり金がないなら知恵を出せ。知恵の一つは、技術的イノベーションである、というところ。

公も民も関係ない、すべてにおいて同じようにしっかり自立に向けて事業と向きあえば、解決策は見えてくる。
こちらもまた、単にリノベやるとか、単に公民合築施設を作るといった結果ではなくプロセスを真似ることが全てに優先されるわけです。

といったような話が私にとっては全体としての整理です。

◯木下としての考え

木下としては、事業と金融の二輪について説明し、地域での事業を開発し、地域で事業で黒字をつくると共に、その黒字事業を地元の人たちの投融資で回して、複利で地元の人達に利益が回ってくる+基金が充実していくという、事業と金融での収入をかせぎだしていくという方策がエリアで必要とお話しました。ちょっとはしゃりすぎていますが、地域が豊かになっていくのは、個別具体的な話をすぐに求めますが、そうではなくて大切なのはそれらの取り組みが原理原則として地域がプラスになっていく構造になっているのか否かということです。フレームワークが大切。今の施策の多くは、この原理原則から離れてしまって、単に新規性のある取り組みであったり、注目される内容に一喜一憂、右往左往しているという感じです。そういうことではなく、もっと普遍的な要素に目を向けて考えることが大切だと思っています。

ちょっとわかりにくいかもしれないが、例えば、二宮金次郎の地方再生もこの理論にもとづいています。最近オススメしているので、なんか売り切れが多いんだけど、ぜひ読んでください。
  

二宮金次郎はなぜ薪を背負っているのか?―人口減少社会の成長戦略 (文春文庫)




基本的に出資・融資して自分で事業開発して資金を回していく。このあたりを地域全体で徹底してバランスさせていくというのがとてもしっくりくるんですよね。最近提案するものも事業開発とそこに対する金融策だなと思って取り組んでいたので、かつて二宮金次郎について読んだ時には今ほど経営的知識や意識や経験がなかったからかしっくりこなかったんだけど、報徳仕法などについても最近は読みなおしていくと結構しっくりきます。あとはドキュメンテーションに対する情熱もよく分かる。そして政治行政では不遇な扱いを受けるのも僭越ながらによくわかるような・・・。

ということで、昨晩はシンポジウムに登壇しながら色々と考えさせられました。大南さん、清水さんに挟まれてとても楽しかったのでございます〜。

やはり結果を真似るな、プロセスを真似ろ。

何事も簡単に一発逆転なんてないのでしっかりやっていくしかないなーと思わされたところでした。
 
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