ここ何回か都市化と移住についてブログ・エントリーを書いてきましたが、近年感じるのは「定住」って概念変化です。

当然ながら農耕社会の時代は、畑や田んぼという生産活動をする場所自体が固定化されていましたから、人は仕事・居住が近接でした。仕事自体が分業体制というよりは自らが常に従事しなければならなく、手を抜けば成果物(作物の収獲)自体を失うことにもなるので、移動というのもそれほど長距離にはなりませんでした。

その後、工業化によって生産活動の場が一定流動化しました。人々は職を求めて都市部などに移動し、しかしながら工場などは固定化されているものなので、そこへアクセス可能な範囲に居住し、日々決まった時間に出勤して働いていくというスタイルでした。オフィス勤務の方の場合にも、出張などはあるとしても基本的には自宅とオフィスを往復するというのが、仕事の基本。事業がグローバル化して国内・海外への転勤なども増加したりしても、結局はその移動先で自宅とオフィスの往復という意味では固定的であったと言えると思います。

少し前になりまってしまいましたが、馬場さんが「週末は田舎暮らし」という本を出されて献本頂きました。
文字通り、週末は東京を離れて千葉で過ごすというデュアル・ライフに関して書かれた本です。こういうのも従来の居住概念の中では存在していなかったわけですが、考えてみれば、仕事とかも土日は休みとか、もしくは結構自分なりに時間の調整をつけられ、移動コストも安くなってきていることを思うと、別に「住むのは1箇所」というルールなんてないんですよね。別荘というよりは2つ家があるという話が成立してくるんですよね。家庭環境や子育てという人生のステージによっても変わってくるのではないかと思わされました。



今後、インターネットのさらなる高度化によって、様々な仕事が場所に拘束を受けない種別が増加していくでしょう。
さらに居住についても昔から比較すれば流動性が高まっていて選択可能な住宅が沢山あり、何より移動にかかるコスト(時間と費用)がどんどん安くなってきていることで、「定住」の概念ってこれからどんどん変わっていくのではないかなということを感じます。

人口減少の中では、1人あたりの生産性を改善していくことを目指して、国内移動などについてもさらなる高度化が模索されています。
その結果として、より大きな都市部に人々がどんどん集まっていって都市圏なども集約されていく予測になっています。一方で個人としては、移動するのが広範囲で安く可能になり、人口減少で住居などもどんどん流動化したすると、十分に複数地域を行き来しながら生活できることは可能になっていくと思います。

以下のように50年前と比較すれば飛躍的に高速道路、新幹線、飛行機などの手段で多様かつ安価に人々は遠くまで短時間に移動できるようになっています。今後は、空港のコンセッションによって発着数や様々なサービスが充実されると、より一層LCCなど新たな低価格輸送ビジネスなども発展し、ますますもって我々は移動可能な範囲と頻度が拡大していくと予想できます。また、今は人力に頼っている自動車などが自動運転システムに置き換わっていくことが可能になれば、例えば長距離輸送・旅客サービスもより低価格で利用できるようになるでしょう。

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各地域は定住者というよりは、「季節居住者」や「2-3年のアドホック居住者」や「子育ての時」とか含めて、時間軸やライフステージ軸をもう少し細かくした形での交流人口以上定住以下の居住形態のセグメントを攻める考え方を持つのがよいのではないかなと思ったりします。マルチプレイスライフを前提とした形態とかもまだまだ色々と考えられるなと思います。

どうしても定住定住という掛け声を聞きますが、それも大切であるものの、人々の生活スタイルなどが変化していく中で、こういうセグメントも無視できません。何よりホワイトワーカー、ゴールドカラーワーカーなどの仕事自体の場所性が希薄になっていくが、生産性は高い人ほどこのような選択を今まで以上にしていく可能性が高いのではないかなと思います。

あまり昔からの概念にとらわれて人々のライフスタイル変化を見過ごすことがないようにしたいものです。
空間は極めて固定的なものから、流動的なものにより、極めて多くの人達がその時時のニーズによって活用していくアドホック利用の壮大な蓄積によって成立していくように思います。

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