先日、「地方の時代」「農村の時代」といった言葉を中心にアジテートする議論の場に出くわし、大変違和感を覚えました。数人・数十人の若者が移住した、という話は勿論大歓迎すべき話ではありますが、それだけでもう大都市が終焉し、地方や農村に人々がかえる、なんてことはないと思います。

実態としては都市化の時代、大都市の時代です。

戦後、1950年~1985年にかけて進んできたのは、東京、大阪、名古屋の三大都市圏への人口流入です。
さらに1975年以降は東京圏一極集中が進んできたと言えます。



(引用元) http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/7675.html

首都圏の人口は1950年には1305万人と全国総人口の15%程度でしたが、2010年には3561万人に伸びて全国総人口の27.8%にまで上昇しています。半世紀の間に人口が一気に2倍以上に増加しているわけです。

バブル崩壊後は一旦首都圏流入は鈍化したものの、1990年代後半には34万人、2000年代前半には70万人の増加となっており、自然増の減少を鑑みても、首都圏の人口変化は他のエリアのような減少と比較すれば、大きな変化がないまま推移してきていると言えます。つまりは、大都市部である首都圏に未だ人々は移り住んできているのです。



(引用元) http://www5.cao.go.jp/j-j/cr/cr11/chr11040101.html

人口偏在は指数から見ても進んできており、未だ都市への人口流入が続いています。
都心回帰も進む一方で、流入する人口を受け止めるために大都市部周辺のエリア開発も進んで都市化が進展しているため、今後も都市圏への人口流入の流れは大きな構造的変化がない限り変わらないといえるでしょう。

極めて重要なのは、ニュースソースなどで地方における特異な事例だけをもとにして「地方の時代」といったことをうたい、それに対して過度な支援制度などを要求することです。本当に地方都市や農村の時代であれば、支援などなくても人々は地方にいくわけで、そういう人は少人数ではありますが、いつの時代にも存在してきました。

地域活性化などに取り組む上では、「大都市は荒んでいる」「もう大都市の時代ではない」といったような地方をアジテートするような意見とかではなく、現実として大都市を選択する人たちが何十万人と未だいる事実を受け止めた上でどうするか、を考えなくてはなりません。さらに現実には、人口半減予測されている地点が日本全国の6割を占める予想になっている事実とも向き合い、その中でどのレベルで生活環境を維持していけるのか、考えなくてはなりません。

自治体などの財政も極めて厳しい中では、従来のようにわずかな税収と地方交付税と債券発行で現在の地方の上下水道をはじめとするインフラを維持した近代的生活環境維持も困難といえるでしょう。

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(引用元) http://www.mlit.go.jp/common/001033677.pdf

現実から目を背け、気合と根性でどうにかしていく。
現実の話をすると激しい批判にあうため、いつの間にかアジテートするような意見ばかりをしていくことが業界的に一般化していくことは極めて怖い環境と言えると思っています。

深刻な環境と向き合い、多くの人がなぜ地方都市より大都市、農村より都市部を選択するのか、その現実を見る必要があると思います。深刻な環境を直視するからこそ、現実的に有効な手段をとれると思っています。

変な勢いづいた勘違いは後々大きなしっぺ返しをくらうことになると思います。今の実情はある意味で20-30年前からこういうタテマエの心情論を中心に政策も取り組みも行われてきた結果のように思えて仕方有りません。

◯【参考】「まちづくり・失敗の本質」
http://blog.revitalization.jp/?eid=810872

こちらもお読みいただければ幸いです。
 
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