Kindle本も普及してきた昨今、年末だからといって本を買い溜めるという人も少なくなってきているとは思いますが、今年、Twitterでおすすめしてきた本を簡単にまとめときます。

まだ読んだことがない本があれば、ぜひおすすめいたします。


1. 明治維新 1858-1881 (講談社現代新書)

これは今年一番オススメしたい本の一つかと思います。特段明治維新に思いを馳せているわけではなく、なぜ「議会制民主主義」と「経済成長」を両輪で回せる改革ができたのか、ということと、地方が独立していた時代から国家的な集権を図ろうとした変化を理解せずに、今後の地方分権などに備えていくことは不可能だと思っているからです。またそのような変革を起こそうとした人間の頭数も全体の0.4%に過ぎなかったりと、とても限定的なところから起きた変化であったと言えます。その0.4%の各藩を代表する人材がどこでつながっていたかといえば、経済開発に積極的だった藩が自前でもっていた地域商社での海外との取引の場であったことも大変興味深い話です。

明治維新というと、坂本龍馬とかのストーリーに注目されていしまうのが司馬遼太郎の影響力のよくないところで、もっとシステムやより全体をみて議論するべきことだと思います。そういう意味では、この本では政治史と経済開発などの観点から明治維新を、現代における新興国などにおける政治変革などと紐付けて議論しており、我々が道州制含めて未来に向けて地方が自ら考え、行動するに向けて必要とされるプロセスを考えるのにとても有益な一冊です。新書ですが、内容は大変分厚いものです。




2.富・戦争・叡知 [単行本]

これは知り合いの方からおすすめさせて読みましたが、株式市場という無数の人々が参画するものが、実は個々人では本人も認知できていない断片的かつ不完全な情報を映し出す鏡として整理されている面白い本です。第二次世界大戦における内容も、新聞や各国の論調などではまだ日本が優勢だと書かれている時にも、株価は既に落ち始めていたり、などなどマーケットの動きから時代を回顧するのは大変興味深いものです。

特にこの「叡智」というものの定義が個人的には面白いなと思ったのは、無数の人たちが参画する市場を通じて生み出されるという仕掛けについて、株価などから説明している点ですね。

まちづくりにおいても個人的にはこの「叡智」という仕掛けについては使うべきだと思っていて、限られた人たちの委員会とかで物事が決まったりするよりは、市場と向き合って事業開発やってどうにかうまくいくようにしていこうという中の試行錯誤によってこそ、市場の叡智を活用できる、と思っています。




3.Triumph of the City [Kindle版]

英文の本ですが、木下でも読めましたので恐らく大丈夫です。ま、ちょっとアジってる本なんですが、最近ボクのまわりだと、どうしても「地方の時代」「農山漁村礼賛」みたいな論調が強すぎて、けどなんだかんだいって都市化って未だに進んでいるわけですよ。バブル崩壊した後とかであっても、2000年から2010年までの間でも100万人以上が首都圏に人口移動してきているわけでして、都市と農村の関係というのは、実は「経済格差」ということだけでは片付けられない、人権保護、福祉など含めたトータルなパフォーマンスという観点でどう都市が優れているのかという話をしている本です。

こういう見方もあるし、こっちの方がマジョリティだから都市化が未だ進んでいるのかもなと感じる。普段付き合っているコミュニティの影響ばかり受けずに、より複数の視点をもっていきたいと思わされた。




4.隷属への道 ハイエク全集 I-別巻 【新装版】

これは完全に古典で、大学学部時代とかに読んだ本ですが、改めて読むと自由主義の基本を考えさせられる一冊です。


新自由主義批判というのはありますが、そもそも自由主義自体が正しく理解されていないことも多く、ハイエク自身が指摘している内容とかも、実はちゃんと公正取引に関するルールは必要だとか、システム全体での社会保障の仕掛けとかについても言及したりしているわけです。何もなんでも市場化しろといっているわけではなく、市場化によって得られる叡智を活用すべき分野に、行政などが踏み込んで限られた人間で意思決定するとろくなことらならん、ということを示しているわけです。

どちらにしても、読んだことない方には読んでいただくと自由主義に対する偏見とかもちょいと変わるのではないかなと思うものです。地域活性化においても市場の力を生かしていかないと、支援ばかりしてもらっていてはいつまでも解決できないこともあるので、そのあたりの切り分けを意識する上でも良い一冊と思います。

 


5.文章は接続詞で決まる (光文社新書) 

少しばかり息抜き的ですが、なかなか僕もいきなり完成度の高い文章を書くことができないのですが、この本をみたときに「あー大学院の時に言われたな」というのを思い出しました。我が大学院の課題の一つが、分厚い経営史の教科書を1章にあたる毎週40-50pageを2ページのレポートにサマライズするというものでした。

レポートを書く時に言われたのは、接続詞を的確に使えると流れが極めてよくなり、情報が伝わりやすくなるから、接続詞の使いかたを改めて学ぶと良いよ、と。これ結構普通に生活していると「そんなことわかっているよ」と言いたくなるのですが、意外と読んでみると、あーここまで厳密に意識していなかったな、ということが沢山あります。

ぜひレポートの完成度を上げたい方、企画書とかでも的確にサマリーを書きたい方にはおすすめ。




6.わかったつもり~読解力がつかない本当の原因~ (光文社新書) 

「わかったつもり」というのは大変厄介なものでして、つまりはちゃんと読んでいないということなんですよね。
様々なシーンで説明しても、「あーはいはい、こういうことでしょ」という中身が全く違っていることが少なからずあります。文章についても同じで、読解力というのは読み込んで行く中で、自分に対して、著者に対して双方に批判的立場を足りながら読まないと、そうそう中身を理解することはできないのです。

批判する人の多くもちゃんと文章や背景などを読んでおらず、多少調べた知識レベルで、文章を読んですぐに「わかったつもり」になって批判している人も少なく有りません。自分への戒めも含めて、「わかったつもり」にならないように気をつけたいところです。





7.組織の“重さ”―日本的企業組織の再点検

これはタイトルと共に、結構内容的にも分量的にも重たい本なんですが、結構普段感じていることを経営科学的に分析してくれている本です。ま、一橋の沼上先生たちが書いているのですが。

組織って話が決まるまで時間がどんどんかかるようになったりするわけですね。大企業病とか言われる奴です。
けど、大企業病なんて病気はなくて、そもそもその組織がどうして、どの程度、意思決定に時間がかかるのか、とかを「組織の重さ」と整理して解説している本です。皆さんの組織でも「なかなか物事が決まらない」とかを体感的には感じていても、その問題の構造、その重たさ具合というあたりを科学的に分析した人はいないかと思います。そんなことを考えることができる一冊。組織変革をする際に事前知識として身につけたいところです。




8.経済学者の栄光と敗北

これは様々な経済学派の変遷を要約してくれている一冊。僕も経済学部卒ではないので、経済学の変遷とか知らないことも多かったのですが、これでなんとなく、あーこういう弟子筋なのね、みたいなのがわかります。そして、わかってしまうと、結構「あーなんかこういうので対立しているのか」という経済的な理論についてもそれぞれを相対的に見ることができて、地域における取り組みを見極める時にも、この人達はこういう経済に対する考え方なのだな、という思想的背景を理解しやすくなるなと思います。




9.決算書がスラスラわかる 財務3表一体理解法 

これはもうここ何年もおすすめしている財務会計の基礎を勉強するのにお勧めている一冊。
家計と異なり、B/S、P/Lとかが出てくると一気に意味ぷーになりがちな財務ですが、そんなに難しいことをやっているわけではなく、人間が頭で一気に整理しにくてお金の流れをちゃんと記録してくれる整理票で、なおかつお金には流れがあるので、その流れをどう見るのかを理解できるものです。

いきなり簿記とかうんぬん以前としてこういうの読んで体系的に理解するとその後のすごい吸収しやすくなると思います。




10.大家も住人もしあわせになる賃貸住宅のつくり方

さて知人が今年出した本の一つ。少し心象的な価値観で読む人も多いのですが、個人的には経営合理的に考えた際の賃貸住宅経営の一つのケースと思ったものです。

部屋が1年間空いているとすれば、10万円として12ヶ月120万円の機会損失。とすれば、120万円投資して部屋に入居してくれる人をつけて家賃払ってもらうのと変わらない(ま、厳密には入居者がいなくなるというリスクはありますが、それほど確率的に高くはないでしょう)。であれば、120万円を投資する中身をオーナーとかが決めるのではなく、入居希望者を見つけて、その希望者の個別にニーズにカスタマイズする、オーダーメイド賃貸がいいじゃん、というのも、完全にマンツーマンマーケティングの方式として実需に則した内容にしてしまう。そうすれば、他の一般的な物件と比較不可能なポジションを作って、長期入居者になってくれて、部屋も大切に住んでくれるから、抜ける時にも次の住みたい人を確保しやすい。とそれぞれが合理的。

といろいろと著者は「愛」と呼ぶものを、木下的には「金」に変換して読んでしまった(という罪深い)一冊。
しかしながら、相手への愛は経済性と相反しないという意味でとても重要な示唆に富む一冊。




11.「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ

これも結構この分野ではもはや老舗本。世論調査含めて社会調査というのは常にウソをつけるという意味で、基礎知識で入れておくべきものです。地元紙とかでの調査、自治体が発表する内容、それぞれ疑いつつ理解しないといけません。

そういう基礎的なスキルを身に付けるための一冊。




12.ブルー・オーシャン戦略 

最近Kindleにもなっていて再読。地域活性化は政策的な方針に則ってやる人が多いわけです。自治体とかも護送船団方式で、皆がやることに乗っかっていく。ゆるキャラ流行れば、みんなでゆるキャラ。まさにレッドオーシャンであります。

今後、地域活性化は他がやっていないことをやる。もしくはやれるようにする。これがキーワード。成功事例を予算つかって真似るなんてアホなことはやめて、自分たちが他でやっていないことをいかにやるか、というのにフォーカスすべきと思っています。




13.失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

これも毎年おすすめしている一冊。「なぜ失敗は起こるのか」「なぜ失敗は繰り返されるのか」ということを考えるためにも、常にこの本のことは頭に入れて行動している。時折、自治体とのプロジェクトで失敗の予兆がある体制になったら、猛烈にその問題を改善するために行動し、それが改善できなかったら、退くことにしている。

未読の方には必ず読んで欲しい。地域衰退はまさに「失敗の本質」に書かれている日本的組織の問題を今に引きずっているケースがケースが少なくない。




14.国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(上)
15.国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(下)

上下巻上下巻の結構な重たい本なんだが、国家版イノベーションのジレンマみたいな本である。
国が興り、繁栄し、そしてなぜ衰退するのか。このライフサイクルを人類史上に残る国々のケースをもとに語られていく中で、我々は今後どのように生きていくべきなのか考えさせられます。

地域活性化みたいな、地域の盛衰についてもある意味でこのような大きなうねりの中にあると考えて行動する必要があるなと思われます。

 


16.小さなチーム、大きな仕事〔完全版〕: 37シグナルズ成功の法則

これは、地域でプロジェクトを立ち上げる時には読んでもらいたい一冊。
生産性の高い仕事の仕方に拘ることはとても大切で、ネットベンチャーの話ではあるが、小さな組織の回し方としてとても参考になることが沢山あります。

過去の組織に対する固定観念に囚われて変な固定費をかけることがないよう、ぜひ読んでいただきたい。




17.知的複眼思考法 誰でも持っている創造力のスイッチ

これももう老舗本。色々な物事を自分の頭で考え、創造的な発想をしろと言われてもなかなか難しい。それは自分の中に考えるために有効なモノサシやフレームワークなくしてできるほどの人はそうそういない。僕もその一人で、やはり様々なフレームワークを持つことができたことで、情報を整理して、自分なりに発想すべきポイントをつかむことができるようになっている。

まだ思考するための枠組みをなかなか持てていなくて、ロジカルに考えること、自分なりの創造性を生み出すのが苦手な人には読んでもらいたい一冊です。




18.V字回復の経営 2年で会社を変えられますか

これは必読書。地域での再生プロジェクトを進める時に既存組織の問題などどのように変えつつ、さらに事業を構築していくのかをイメージできる骨太の一冊。

AIAのアライアンスパートナーの方々にも必ず読んでもらっているし、学生などにも薦めています。自らの企業再生に関する実体験に基づいてまとめている内容だけに迫力があり、自分に置き換えて色々と考えさせられるのです。




19.ワーク・シフト (孤独と貧困から自由になる働き方の未来図<2025>) 

これは流行本でしたね。働き方が今後変わっていくというネタを色々と示してくれます。
勿論なんでもかんでもこう簡単に変わるわけではないと思っているが、とはいえ、わざわ過去の領域に身をおいておく必要もないので、今後新たな動きに合わせた働き方をしていきたいなと思うところです。

地域における取り組みも昔の価値観にとらわれて、仕事をしたり、組織経営をしているようでは、なかなか未来は暗い。ただでさえ既存のやり方で不利に立たされているのだからこそ、新たな領域を果敢に取り込んでいくことが必要だと思う。




20.まちづくり:デッドライン

手前味噌ですみません。
今年4月に出した「まちづくり:デッドライン」。12月にはKindle版も出まして、多くの方にお読みいただけたこと、心から御礼申し上げます。

とはいえ、この本で解説している「リノベーションまちづくり」という分野は2014年が本格的に普及する年になるだろうと思っています。各物件の再生を行うための事業チームの組成、対象エリアの絞り込み、事業構築のための逆算方式、周辺エリアへの波及など実例と共に、これら推進方法についてはこの本に勝る整理をしているものはまだないと自負しています。実際に我々も実地で北九州など含めて関わってきてやってきているからこそ、ここの内容は今取り組まれている内容のフレームとしてはそれなりの完成度だと思っています。

まだ未読の方はぜひ。




◯「稼ぐインフラ ―― 人口縮小社会における公民連携事業」
http://synodos.jp/society/6053

◯「リスク・責任・決定、そして自由!」
この連載は結構面白いのでぜひ読まれることをおすすめします。

1.「小さな政府」という誤解 http://synodos.jp/economy/5973
2.ソ連型システム崩壊から何を汲み取るか http://synodos.jp/economy/6279 
3.ハイエクは何を目指したのか http://synodos.jp/economy/6578
 

Kindle Paperwhite(ニューモデル)



出張が多いこともあり、今年友だちからもらったPaperwhiteは本当に多用しました。
というか、もはや紙の本とか持ち歩くのは大変すぎて・・・。2014年は本当の普及期に入りそう。
まだ持っていない方は安いですし、ぜひどうぞ。
 
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