「朽ちるインフラ」議論では公共施設の老朽化が注目されるようになりましたが、公共施設が老朽化する問題と共に、老朽化せずとも使わなくなって放置されている公共施設も少なくありません。

地方とかいくとすごい綺麗に建てなおされた放置されている小学校とかみると、なんで小学生の人数が減少するのがわかっているのにこういう施設を新規開発し、なおかつ予定通り閉校して放置されていたり、適当な使われ方が終わったりしているのか、大変不思議かつ、政治的意図を感じて腹立たしく思うこともあります。

なんとなく朽ちるインフラ→老朽化しているから立て直し、みたいな話になってしまったりして、立て直しの数を少なくしようとかそういう話から切り込まれることが多く、古い施設だけを順番に閉じて、まだ新しい余っている施設に寄せたりなどの再利用に関する考え方がまだまだ少ないと感じています。もしくは、発想がとても硬直的かつ限定的なので「やっぱり無理」みたいな話になってしまう。

財政的に厳しい状況下で、安易に「用途を変えるために建て替える」という従来のやり方を行使できるとは限らず、「いまある公共施設の利活用する」という方法が積極的に用いられる必要もあります。そのためには、公共施設の用途変更などを含めた検討はもっと従来にはないレベルで自由に考えられて当然です。

先日、馬場正尊さんが「RePublic 公共空間のリノベーション」という本を出されました。
公園、役所、水辺、学校、ターミナル、図書館、団地という複数の公共空間をリノベーションしていくアイデアなどを書かれた本です。例えば、朽ちるインフラ問題を捉えて、公共施設白書自体を作ったもののどうしたものか、と悩んでいる財政担当や、運営方法の転換を考える公共施設などの担当者の方とかにもう少し発想を柔らかくするためにこのような本は使えるでしょう。

さらに民間から公共施設利用をしたく、提案書などを書いたりしている人にも参考になるでしょうね。従来のような単純な指定管理みたいに結局は行政からの予算だけで施設運営代行するみたいな少しレベルが低いものではなく、もっと事業性を併せて持たせることで極力公共負担がなくとも維持していきつつ、さらに公共性も一定担保しながら事業的に儲かるという高レベルなマネジメントを模索する参考になるかと思います。

単純に建築的にリノベーションすりゃいいって話ではないのです。事業運営の基本的な発想と計画があってのリノベーションです。


廃校利用などでは様々なケースが全国各地で出てきており、日頃色々と仕事をご一緒している清水さんたちが運営するアーツ千代田3331なんかも廃校を利用したアートセンターとして年間100万人以上が利用する施設に転換されていたりします。しかも、しっかりと商業やシェアオフィス、アトリエなどの幅広い用途を複合的に組み合わせて、数十人の雇用と、施設維持費などを事業を通じて捻出しています。

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東京おもちゃ美術館もまた、学校の再利用で指定管理ではなく、普通に家賃を支払って民間運営されている施設です。

このように公共施設を単に異なる用途などで利活用するというだけでなく、それを民間事業によって回すことによって「税金を食い続ける施設」が、「新たな雇用や税収を生みつつ、さらには家賃収入さえ自治体にもたらす施設」に変わることもできるのです。

今後はこのような利活用方法が拡大し、さらに維持を複数自治体が合同で行っていく「シェア」も進行していくでしょう。



最終的には地方都市では、公共施設も民間施設も含めて一気に空間余剰が拡大していくので、「民間施設の一部を公共施設として、利用しない公共資産は売却する」など含めて、民間→行政、行政→民間という空間自体の相互融通を図って、地域内の最適化を図っていく必要があります。トレードですね。

実は都市経営的にみれば、行政管理の公共施設も、民間管理の民間施設も、地元での空間という意味では同じかつ維持費がかかりつづけ、エネルギーなどは地域外から購入することが多い外貨流出要素でもあるので、ここを全体をみて最適化していく視点が求められます。

今後の公共空間のキーワードの順番は、
「リノベーション」「シェア」「トレード」、これでもだめなものに関しては、「リビルド」という流れなのではないでしょうか。

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