先日再掲したエントリーで知人と議論を交わしていたので、少しこちらにも整理したいと思います。私は今後の商店街で行っていく中小商業は、卸小売では相当なセレクト効かせられる店か、自ら商品そのものを製造して小売する店か、技能によって差別化できるサービス業くらいだと思っています。

既に数十年単位で地域商圏を対象とした流通業の末端としての中小小売業は競争力が相対的に低下し、したがってシェアを落としてきたきたわけです。中小小売商→量販店の流れですね。さらに今は量販店→ネット(中小小売商も参戦)という形式に以降していっています。となると、地域内でどこにでも売っているものを提供するという役割自体が様々な競合(ネットも含めて)が出てきて普通にやるので、卸小売はゼロにはなりませんが、その役割は普通に特別ではなくなるので、ますます利益率が低下するのも当然と言えます。量販店とかネットで安く売るのが悪い!のではなく、もう特別その人がいなくともいくらでも代替が可能な市場になって、さらには市場規模自体は縮小するという状況になっとるわけです。それをいい悪い言っていても計画経済ではありませんから、無理なわけです。であれば目はもっと先に向けられるべきです。

それが製造小売による新たな中小商業の可能性というところです。以下参照。


さらに、中小事業者でも、従来は直接小売とかしていなかった商品、B2Bを主として来たような部品販売とかもネットで行えるようになったりしていて、最近では自転車関連から、建材関係までネット経由で販売して成長しているところもあります。国内のamazonで好調だと、海外のamazonからも出しませんか、というお誘いがきたりします。
だからネットという地域商圏に物理的に縛られない形式の統合型マーケットを対象にして中小小売とかは従来になかった市場携帯で伸びていき、そこで中小事業者が活躍するというのも出てきているわけです。

つまり、一定の産業基盤があり、したがって一定の人口のある地域商圏のボリュームが確保されるところは、都市部において内需対象にした製造小売やサービスという都市型産業のモデルで中心部を作り替えて競争力を持たせることができるということです。

さらに、ネットなどの全国・世界統合マーケットに出て行ってかなーりニッチな領域の商品を売りさばいていくこともできて、それは品揃えとか投資規模に左右される従来の競争軸とは全く異なるところで外需を狙うことができます。昔は商圏が分断されているから出稼ぎにいったりとかでしたが、これからは地域内内需を回しつつ、ネットにより統合されていくマーケットには地元にいながらにしてアクセスできるという二重作戦で成長余力を持つというところです。

今までのあり方を捨てて、次なる市場変化に対応できるのか。大型化には対応できなかったというのは資本調達力とかで仕方ないところもあったかもしれませんが、これからは特段大きいことによる効率性が強いことではない戦いと思っています。ともなれば、あとは中小小売商側が変化するか、しないかというお話です。

商店街を昔のように、みたいな時計の針を戻すようなノスタルジーは無理ですが、自ら時計の針を進めて新たな形に変化することは可能です。

けど私は従来の店の変化というのはやはり固定観念とか、もう年だから無理とか、色々と理由をつけてやらないので、新たに商売始める人達がこういう変化に対応すればいいと思っています。既にそういうお店は沢山でてきていますしね。結構こういう店の出現と増加し面白いのです。年数重ねれば新陳代謝で置き換わるようにしていきたいと思っています。

「まちづくり:デッドライン」でもハイブリッド店舗経営の事例とかも指摘していますが、東京とかでやってて地方にもどってくる店舗経営者の方々が実践しているモデルです。

以下は昨日のやりとりです。ご参考までに。

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Q : 転売が主のビジネスモデルに頼ると、①小売での利幅の大きい(仕入れ値が安く、売値の高い)商品を扱うようになる、②顧客にとっては満足度が高まらない(本来の価値以上のものを買うのですから当然)、③結果、お客様も離れて行く、と衰退しかねない怖さがありますよね。

木下 : やはり競争の基本的なポイントは、商品、価格、サービス、ブランドという4点が大きいわけですが、転売では、まず商品自体で差別化ができず隣近所でも同じものを取り扱える。価格自体もご指摘の通り卸から仕入れるので粗利が低いから価格競争するためには卸価格の引き下げできるだけのバイイングパワーが必要だが中小小売商には無理、サービス面での違いを出すというのがありますがこれはほぼ立地での利便性くらいしかやっていないところが多い、ブランドは別にない(あえて言えば熱海というブランド?)だから特段地域内で差別化要因にならない、といってしまえば、同じ商品をより安く立地の良い場所で販売されて駅ビルなどの安心感がある環境で出されたら一発ということですからね。


Q : 製造小売でしたら、製造プロセスに時間がかかるために、転売以上に、市場を的確に掴まないといけないと思います。ある商品から別の商品にチェンジすることをスムーズに進めるには、どうすればよいでしょうか?

木下 : 製造小売といってもラインを組むわけではありませんので、その場で商売になるものを自分で見極めて、自分の手で作れるものをその場で作って提供するということですからね。事業を継続する知り合いは、商売替えをバリバリやっています。最たる人は、電気店を廃業して、出家して寺を立てましたw スムースに進める以前として、別のやりたい商売を見つけるのが先決かと。やっぱり自分も、周りもみてて思うのは、何かやりたいという動機ってとても大切で、何が儲かりますか?何が失敗しないですか?というのは少し視点が違うかなと思っています。動機がないのであれば、商売は辞めたほうがよいわけですが、それでは生活が成り立たないというのであれば、必至に考えるかと思います。商売やめて別の仕事につくというのもありますしね。うちの父はそうでした。


Q : なるほど。「製造小売」は「転売小売」以上に、主体性が求められるわけですね。当たり前の事実ですが、案外見落とされているような気がします。

木下 : 元々転売自体は、卸の人たちが店の陳列までメーカーの営業の人がやってくれてきたところも多く、土産店では結構未だにそういうところもあるんじゃないですかね。どちらにしても、品物のセレクトとかは卸に任せていたりと目利きさえしていない人もいます。そうでない場合にも、やはり商品自体のセレクトの幅は市場シェアでみて、主体性のあるしな選びって相当に難しいです。一方で製造小売は単なる場貸しみたいな商売はできないので、主体性は極めて大切だと思います。単に業態替えをするというよりは、そもそもの商売の構造自体が違うといいましょうか。そのあたりは違いますよね。


Q : 皮肉な言い方はイヤなのですが、製造小売に変身できる小売商って少ないのではないでしょうか。製造小売でいけば生き残れるのではなく、製造小売でいける力と主体性がないと生き残れないのではないか、と思ってしまいます。

木下 : 仰るとおりです。なので、既存の卸小売の商店のほとんどは現在の世代の人たちで廃業します。しかし、別の人達が新たに創業して置き換わっていきます。その時に製造小売業態が多くなっています。サービス業含めて(サービスも技能とかで差別化きいて粗利が高い)。今、既にそうなっています。


Q : なるほど、既存の事業者が「生き残れる」ようにするのではなく「生まれ変わり」を視野に入れる、ということですね。ビジネスの感覚としては当然なのでしょうが、行政にはこの観点が少ないだろうな。これは大事なところですね。

木下 : まさに生き残るなんてことは僕はないと思っていて、LivingDeadになっている商業者を集めても救済策を求められるだけで、新たな価値を生み出す話になんか全くならないです。ちゃんとした商業者はそういう集まり自体に出てこないので。行政は対峙するのは、圧力団体である業界団体の鎮圧という意味合いが強く、本気で商業をどうにかしようなんて思っていない場合が多々あります。本気の場合は全くもって、生き残りではなく、生まれ変わらせるという政策を持ち出すのが適切と思います。つまり今の人達を優遇する(補助金で集客イベントとか)のではなく、業態替えなどの投資をする(新たな商売やる気がある際の資金調達サポートなど)ことを誘導するほうですね。


Q : 行政が本気ならば、「自ら積極的に新陳代謝して長生きするか、生まれ変わってフェニックス(不死鳥)になるか、安楽死を選んで潔く身を引くか、どれを選ぶ?」という選択をさせる政策ですね。

木下 : いえいえ、悩み続けている領域なので、今の自分はこのように考えているところでございます。その通りですね、どちらにしても投資をしなくてはなりません。自分自身が業態を変えるための修行の時間などを含めて。地域商業は内需を地域内で回すという地域経営の視点においても、また日銭商売というものはこういう時代には個々人のセーフティネットとしても極めて大切だと思っています。だからこそ、既存事業者を中心とした政策を行使して、既得権化してはいけないと思っています。

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