いよいよ年末ですね。さて、年末ということでもう1発エントリーを書きます。

「地域活性化のために取り組んでいます。」といっても、やっていることは人それぞれです。
場合によっては手を変え品を変えイベントをやっているだけで、結局何も変わっていなかったなんてことも少なくありません。イベントやった時に「人が集まった」という現象現象に精神安定を求めてやり続けているうちに、問題はもっと深刻になったりします。これらも補助金もらうものと、もらわずに黒字経営でやるものにわかります。さらに、既存の本業を改善するのに寄与する事業として、補助金を受け取るもの、民間事業として黒字で運営するものに段階に進みます。さらに、現在の事業とは異なる異なる新たな新陳代謝を促進する事業に進みます。ここでも補助金もらうもの、もらわないものにわかれます。

といった具合で、大まかにそれらの事業を整理する上で以下のようなレベルに分けられるのではないかなと思います。

(1)補助金単発イベント
→(2)黒字単発イベント
→(3)補助金非本業関与型継続事業
→(4)民間黒字非本業関与型継続事業
→(5)補助金本業関与型事業
→(6)民間黒字本業関与型事業
→(7)補助金変革型事業
→(8)民間黒字変革型事業

といった感じです。

これらは分断されているわけでもなく、個別の事業評価というよりは、1つの団体が推進している事業ポートフォリオのそれぞれを評価して、どこに位置しているものなのかを認識すると、偏りがわかり、自分たちが何をしたいのか、に併せてポートフォリオを設計しなおしたいいと思っています。

以下で私なりのイメージを解説していきます。

(1)補助金単発イベント
単純に補助金をもらって開催するイベントです。◯月◯日に開催するイベント。
100万円かかるならば、2/3補助ならば66万円支援をうけて、34万円自己負担して開催するといったような形式。期日が決まって出口が明確、当日は盛り上がる、予算管理も単純、補助金がつきやすい、自己負担分も会費や協賛金といったお付き合い資金で担保できる、打ち上げとかで達成感を感じられる、人が集まることでうちのまちはまだ大丈夫だと安心する、などなど開催する理由は挙げられる。また、参加する地域の既存不動産経営や商業経営などの本業の「聞きたくない問題」にいきなり踏み込まなくても大丈夫。


(2)黒字単発イベント
次に進むと、補助金を貰わず、イベント運営をするモデルに進む。参加者からの参加料を出店料などから徴収することで、運営費を賄う形式である。参加料を取るに値するだけの経済的パフォーマンスを生み出している証拠である。

しかしながら、以前として単発であり、本業の構造的課題とは以前として向き合えない。逆に黒字であることで、やればやるだけ儲かるということで、黒字イベントばかりやってしまうという中毒性もある(→(4)になってしまう)。ここで満足してとどまってしまうところも少なくない。

何かを始める時の準備運動的にやったり、チームビルディングのために、ひとまず1つの取組みを一緒にする(=時間を共有する)という意味では良いのではないかなと思います。僕が初めて関わったのは、この(2)の事業でした。


(3)補助金非本業関与型継続事業
ここから継続的な取り組みに入ってくる。たいていの場合は、イベント開催している中で、決められた日だけに開催するのではなく、毎月定例型にしてみたり、ネットで情報発信を継続的に展開する、勉強会を行うといったようなことが多い。イベントに近いものであるが、年間スケジュールを組んで継続的に実施するもののため、分けて考えている。というのも、1回だけ開催するものと、毎月定例で開催していくのは、マネジメント上かなりの違いがあるからだ。オペレーションも1回だけなら簡単だが、毎月コンスタントにやり続けるのは大変だ。

ただこれも、補助金をもらいながら儲からない経費部分を補てんしてもらっている。さらに、各店舗の本業自体の利益率改善とかに関与するというハードルの高いことではなく、あくまで商店街単位での企画であったりする。結局のところは、課題解決というよりは、衰退による痛み緩和策といったところ。

伝統的にはアーケードとかもこれに属すると思っています。昔はアーケードがあればお客さんがくるみたいな話もあったのかもしれませんが、むしろアーケードは他もやっているからうちもやる、といった色合いが強かったように。最初立てた人たちは「儲かっていたから建てた」部類の商店街だったりもします。今となっては、コストはかかり、本業を圧迫しているような状況ですが、継続的に維持し続けるという意味で、ここに分類されると思っています。

最近だと高齢者のお休みスペースとか、そういうはここに分類される感じですね。全体的には社会的意義は理解されるものの、各店舗の本業課題には直結するものでもなく、またそのためその維持費を商業店舗が負担する理解は得られにくいので、補助金が出る限りはできる、といったところが多いです。


(4)民間黒字非本業関与型継続事業
(2)から移行して、黒字になるいうことで、継続的に開催する企画を始める地域の人たちも多く居ます。

例えば、協賛金を効果的に集めながらまちの事業として取り組んでいくケースです。商店街青年部の清掃活動から拡大していった、NPO法人グリーンバードのまちのお掃除活動とかはこの部類かと思います。 http://www.greenbird.jp/

毎月必ず開催する、手作り市みたいなのもこれに近くなっているかと思います。決まった日に開催する形ですね。開催ごとに、市に参加する店の中から開業希望者が出てきたり、資金が溜まっていくことで、(8)に一気に飛躍していく試金石であったりもします。


(5)補助金本業関与型事業
ここで少し毛色がかわります。
既存の商店街における不動産オーナーの不動産経営そのもの、商業者の方の商業店舗経営そのものに関与する事業です。これを補助金をもらいながら前にすすめるパターンです。

伝統的には共同店舗建設とかの高度化事業系はここに属すると思っています。老朽化して汚い店だったところを共同開発する。そのために補助金+融資を出します、というモデルですね。ま、これも今となっては不良債権化してしまっている資金も多くなんとも言えないところですね。

基本的に個人資産に補助金を出すことは難しいので、本業関与型の補助金支給はあんまりありません。イベントで集客イベントというのもありますが、基本的に買い物がない店に集客しても売上は対して跳ねません。

ということで、最近は少し数が減ったように思いますが、一時期むりくり展開していたのは、「プレミアム商品券」事業です。1万円の商店街などで使える地域商品券を買うと、1割~2割などが補助金支給されて、1万2000円分使える、というものです。実質、各商品価格の2割を公費で埋めるという方式。本業的に各店舗は自分たちの利益を圧縮しないままに、各商品は相対的に消費者にとっては安く買うことができるという形です。ま、個別店舗への資金給付に近いわけです。じゃ、これをやって、その先があるかといえば、ゲタを履かせるの近いプログラムなので、単発の若干ながらの売上効果だけで難しいと思っています。さらに、地域商業のためにやったはずが、売り場面積別で商品券が使われたところもあり、コンビニやSCとかにいってしまったケースもあり、商店街に加盟していることを縛りにしているところもあります。少し泥沼化している感じにもなっていきます。

一方で、役に立っているケースの一つとしては、共同決済端末事業などがあります。各店舗がバラバラに導入しているカード決済端末を共通にし、手数料を安価にするためのシステムの初期投資の一部を補助することで、その後は自前で手数料差益で運営させる仕組みです。経営合理化にもなり、本当に金額がはるので、その最初だけの補助支援をし、あとは手数料差益だけで継続しているケースが長崎などにあります。

本業直結のため、かなり刺激力の強い注射な感じですね。聞かないと、もっと沢山注射することになり、ここも麻薬性は強いですね。


(6)民間黒字本業関与型事業
各店舗本業改善は実際は「売上」を増やすのに寄与する事業、「経費」を減らすのに寄与する事業といったものに簡単に言えば分かれます。(もっとB/Sに手を突っ込むのもありますが、さらに難易度は高いですので、今回は触れません)

売上に関しては、販売促進を共同で展開する、業種業態を変える、などいくつかの方法があります。僕がもともと早稲田で本格的に関わったのは、この(6)カテゴリにおけるマーケティング部分からでした。各店舗のクーポン券を発券できる空き缶・ペットボトル回収機を、各店舗から販促費の一部として拠出してもらって運営し、新規顧客の獲得に寄与するという形でした。折込チラシより回収率の高いクーポン発行システムに回収機を仕立てることによって、皆が販促費を支払うというインセンティブモデル。

経費に関しては、熊本から全国で取り組んでいる不動産にかかるファシリティマネジメントを共同圧縮することで、各店舗のごみ処理料金、エレベーター保守料金などを軽減するのもこのカテゴリです。コストオペの改善は本業自体の利益率改善に直結するので、地味にやらないとマズイわけですが、過去のまちづくりでは経費削減共同化とかはあまりしていませんでした。
他の地域とかでは、配送事業を地域内で共同会社で展開し、各運送会社からラストワンマイルの運送委託を受けて展開している場合もありますね。((7)の補助金はいっている場合もあります)

(7)補助金変革型事業
ここで新たなステージです。既存の事業主とは異なる、新たな経営者などを地域で生み出して、新陳代謝を生み出すといったたぐいの事業です。既存の不動産経営も仲介業とかに任せずオーナー自らが展開するといったような、バリューチェーン組み換えを行なってしまうのもここに繋がるものですね。つまり、これまでの不動産のあり方、店のあり方、商売のあり方とかを組み替えてしまうのが変革型事業だと思っています。

ただ(7)でいう補助金をもらって変革が図れるような仕組みがあるのか、というとかなり怪しいところではあります。変革型事業は、常に企業再生と同様に、従来とは異なる組織かガバナンスの中でやるのが、基本条件だったりもするので、従来の組織に変革を求めても、そりゃ無茶があるって話であります。けど補助金の受給可能なのは既存の団体ばかりであったり。。という悩ましい状況ですね。

とはいえ、起ち上げの際に補助金を活用し、その後新規創業促進で継続的に運営されているケースは、北の屋台とかですかね。やはりあくまで起ち上げの際の調査・企画立案支援とかの支援にとどまり、その後の事業化から運営に関しては民間にシフトさせている点で、補助金を入れているとはいっても、どっぷりでもなかったりするのが適切なのでしょうね。これは、従来の店舗条件では出店できない人たちが、革新的な駐車場改造型の屋台というモデルの中で、しっかりと儲かる仕組みを作り、さらに商売やりたい人は周辺に開業していくという流れ。新たな0次会需要とかも呼び起こしながら、新陳代謝を生み出しながら、まちの新たな流れの拠点づくりにもつながっているところが評価されるところと思います。

米子のスカイビルなどのケースも近いですね。補助金で初期支援するものの、事業的にがっつり入店している店が稼ぎ、次なる拠点は民間資金だけで展開していくという流れも面白い。

公民連携における、オガール紫波とかのケースもここですね。施設開発においては公共床部分は国費支援をもらいながらも、民間床は自前開発、さらに運営については完全に黒字化し、施設維持費をトータルで民間床から捻出して、公共床維持を税金いらずに持ち込もうというのは、今後のスタンダードになるでしょう。さらに初期の資金も長期的に国庫返還していくモデルになっているのも特筆です。呼び水としつつも、しっかりモデルで黒字化図るという徹底が大切。

補助金ではなく、出資金という形で支援をうけて変革を生み出すという形式では、長浜・黒壁とかのケースでしょうね。出資金として一部税金を入れ込みながら、投資して稼ぐ施設にリノベーションし、さらにそこから雇用も生み出していく。出資金のため、補助金とは異なって、役員会での決議などで、理不尽な要求は否決したりと、自由度が拡大するわけです。利益も出しても補助金ではないので返還せずに、再投資できる。という意味では8にも近いので(7.5)というのが正しいかもしれません。
(とはいえ、そうはならずにリビングデッドになっているまち会社も多数ですから、あくまでマネジメント能力によって組織だけ真似てもそうはならないということかと思います)

(8)民間黒字変革型事業
さらに、完全民間事業で起ち上げ、黒字化を図って、再投資を続けて変革を図っていくモデルです。従来の不動産賃貸業を変えてしまって、オーナー直営や、リノベ転貸事業を展開し、1フロア賃貸をやめてシェア形式に組み替えたりする現代版家守事業は(8)に分類されるところです。僕も参画させて頂いている北九州家守舎とかはこの典型例の一つですね。バリバリ魚町界隈の不動産オーナーと一緒に開拓していっています。事業規模はまだまだこれからではありますので、来年が楽しみです。

まとめ
今後AIAとして先進地域と進めていきたいのは、(7)と(8)のハイブリッドですね。
まだそこまでの段階にイキナリいけないところは、(1)などの簡単なところというのもありますが、ここは常に「制限」をかけながらやるのが大切ですね。いつまにもそういうことばかりやっていると、地域の衰退速度に対して全く対抗できないままに没落する可能性が高いです。

段階とバランスを意識しながら、常に事業ポートフォリオを組み立ててやっていくのが、まちづくりのマネジャーレベルに要求される仕事だと思っています。

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